【福岡県うきは市】懐かしさを刺激する、日本の原風景
written by ダシマス編集部
福岡県南東部に位置するうきは市。
江戸時代、豊後街道の宿場町として栄えたこの土地では、白壁土蔵造りの建物が今も残り町の中に溶け込む。車で少し国道沿いを進むと、棚田やブドウ畑など扇状地ならではの景色が広がり日々の仕事で溜まったストレスや、普段のもやもやした気持ちが晴れてくる。そんな自然豊かな「うきは市」が町全体で取り組んでいる「森林セラピー」とは一体何なのか?今回は、古き良き日本の原風景を感じさせる、福岡県のうきは市を訪れた。
森林セラピーとは?
そもそも森林セラピーとは何か?簡単に言えば、山の中の散歩道を歩きながら小川のせせらぎや小鳥のさえずりを聞く、森林浴をしながらコースを回るシンプルなものである。
近年、森林が持つ癒しの力が注目され、生理的、心理的な効果が証明されつつある。
とある研究結果ではストレスホルモンと呼ばれるコルチゾールの濃度の変化が明らかになり、また、森林景観による空間的な心理的効果も認められ、医学界からも予防医学などの分野で注目ている。つまり、森林浴や自然に触れる体験をすることで心理的な安心感や落ち着きを取り戻し、癒しの効果を得る事ができるのである。
うきはの持つ天然資源を体験できる、巨瀬の源流の散歩道
うきは市の森林セラピーでは、山のなかでしか味わえない体験が設計されている。
※今回、ガイドの田辺さんに案内されたのは~巨瀬(こせ)の源流の散歩道コース~というコース
※もう一つ、つづら棚田の散歩道というのもある。
入り口にある調音の滝をはじめ、源流を辿るコースは全長、2.2km、家族連れで歩き2時間ほどの道のりである。杉の木から溢れる、木漏れ日を感じながら中腹地の折り返しにある魚帰り(うおがえり)の滝を目指す。
地元高校生と市で手作りしてつくられた、杉チップロードでは普段踏みしめることのない木々の感触を感じながら歩くことができる。
また、山間部の谷間に面した中間地では、やまびこができるポイントなどがあり山ならではの体験が散りばめられているのが特徴である。
『1/f』の揺らぎに身を委ねて
印象的だったのは、道中のちょうど折り返し地点に書かれていた「それは、1/f(エフ分のいち) 森で見る揺らぎの心地よさ」という立て看板。
『1/f』とは人の心拍や、ろうそくの炎の揺れ、小川のせせらぎ音や木漏れ日などが生体リズムと同様の振動をするもののことを指している。人間の生体は五感を通して外界から 1/f のゆらぎ を感知すると、生体リズムと共鳴し、自律神経が整えられ、 精神が安定し、活力が湧くと考えられている。ミュージシャンでいうところの「MISIA」や「美空ひばり」、「宇多田ヒカル」や「徳永英明」などの歌声が、癒し系の「音」を奏でている。
うきは市の森林セラピーは道にあふれ出てくるほどのシダ植物や小川のせせらぎ、小石の陰に隠れたサワガニなどたくさんの自然に溢れていた。木漏れ日がこんなにも懐かしく感じられたのはこの土地を護ってきた人たちのおかげである。
自然と共に築いてきた、うきは市の財産
うきは市には400万年前から形成された扇状地や筑後川、巨瀬川など、自然に育まれた財産が残る稀有な土地である。また、他にも日本棚田百選のつづら棚田や名水百選の清水湧水などがある。
町を歩けば、文化的な趣を感じさせる城館、地元食材を扱ったオーガニックレストランなど、昔ながらの文化と近代的な部分とが織りなす光景もおもしろい。都心でも数える程しかないブックカフェや、そこと併設された雑貨屋など、洗練されたセンスで、うきは市の町づくりを進めている。
最後に
自然、環境のカタチは時代とともに変化していく。
「護り」、「育み」、そこに「住む人」たちがいることでそれを持続的に体験可能にしているのである。今回の様な山間部での自然体験は今の時代、「街」に住む人たちからするとだれもが経験することではなくなってきてしまっているのが現状だ。森の音、林の音、木々の音、川の音、大きな杉の木からあふれる、木漏れ日や、水に触れ、自然100%の温度を感じることが「初めて」の体験となることも、珍しくはない。
うきは市の森林セラピーでは“それ”を護っている人たちがいること、更には変化していく、景観などをどう捉えて育んでいくかについて考える機会を提供しているように感じた。