【龍宮株式会社】地道に向き合ってきたからこそ築き上げた信頼。どん底から会社と向き合ってきた社長の想いとは

レッド

written by ダシマス編集部

福岡県うきは市に本社を持つ龍宮株式会社は、昭和22年創業の歴史のある一社です。脱脂綿やガーゼを基本にさまざまな商品を開発。そのなかでも龍宮株式会社の代名詞とも言われる寝具「パシーマ®」は、肌にやさしい脱脂綿・ガーゼを使用し、一年中快適に眠れると口コミで広がり、幅広い年代の方に人気。パシーマ®は、31年の歴史とともに現在でも愛され続けています。

今回は、そんな龍宮株式会社の代表取締役社長、梯恒三(かけはし こうぞう)さんにお話を伺いました。昔と今の違いや商品への想い、製造業のこれから、そして梯さんが考える会社のあり方とは。

代表取締役社長 梯 恒三(かけはし こうぞう)さん

代表取締役社長 梯 恒三(かけはし こうぞう)さん

1956年生まれ。福岡県うきは市出身の67歳(2024年2月現在)1980年3月に熊本大学機械工学科を卒業し、日本機会学会の「畠山賞」を受賞。大学在学中に創始者の父・禮一郎に請われて、1年休学して家業を手伝う。大学卒業後に龍宮株式会社に入社。2012年に3代目の代表取締役に就く。著書「一品勝負」(幻冬舎)。

執筆:久保田 まゆ香

執筆:久保田 まゆ香

フリーライター。言葉を紡ぎ、誰かの後押しをしたいと取材・インタビュー・イベントレポート・書籍などを中心に執筆活動中。起業家のサポート業務なども担当。やんちゃ盛りな男子2人の母。いつかは推しと一緒に仕事をすることを目標に日々、夢に向かって歩み続けている。

不渡りをだした会社への帰還。地道な努力で立ち直り今に至る

 

――まず梯さんの今現在に至るまでのご経歴を教えていただけますか。

大学2年生の頃、好きなことをしながら暮らしていましたが、その年に会社が1回目の不渡りをだしたため、一時休学して会社の仕事を手伝いました。また学生に戻りましたが、親が築き上げた会社を無くしたくないと思い、再起するために自分も力を尽くしたいと思って戻りました。これが私の原点ですね。

父が退いてからは、兄が社長として経営をしておりましたが、現在の弊社の代表的な商品として長く販売させていただいてる「パシーマ®」に関しては、ほぼ私一人で営業を行っており、今に至ります。製品の研究に関しても、私だけが工業系の出身ということもあり、機械がわかるのは私だけでしたのでとにかくやるしかなかったですね。昔からずっと技術を磨き上げてきました。

 

――長年の積み上げとかご経験があるからですよね。長くずっと頑張られてきたなかで一番自分の糧になったものや社長が大事にしている価値観を教えていただけますか。

地道に丁寧に、目の前にある作業をコツコツと積み重ねてここまできたということですかね。戻ってきた当初、不渡りをだしているような状況ですから、生産するのに必要な機械や部品を買うこともできませんでした。部品を買ってほしいということすら言えなかったので、何万円かする部品も買わずに自分でつくったこともあります。

こうした状況を乗り越えてきた今、私たちは「誠意と努力、技術の向上、生産奉仕」という社是を掲げています。この3つがあったからこそ、会社がなくならずにこれたと思っています。弊社は従業員に感謝の気持ちを直接伝えるために給料袋で給料を手渡ししているのですが、その袋にも社是を書いているんですよ。皆で意識を統一して、日々仕事と向き合えるためにも大事なことだと思っています。

 

毎月100通届くようになった喜びの声。主力商品「パシーマ®」の魅力

 

――この仕事のやりがいはどんなところですか。

愛用者の声をいただけることですね。毎日何通かアンケートはがきの回答が届くのですが、そこには熱烈な声をいただけることも多くて。1か月に100通近く喜びの声が届くのをみると本当にうれしく思います。

 

――毎月100通近く今でも声が届くのはすごいです。社長が思う「パシーマ®」の魅力や特徴について、改めてお聞かせください。

一番の特徴は「肌ざわり」にあります。だからPRする際も頭でっかちな理屈ではなく、五感に訴えかけることを心がけていますね。「パシーマ」を使ってもらうための1番の入口は肌ざわりの良さを体感してもらうこと。実際に触っていただければ、多くの方が使いたいと思っていただける商品です。おかげさまで販売を開始してから今年で31年になります。

「パシーマ」は、先代のアトピーがきっかけで生まれたものなんです。そうした肌でも使い心地がいいものを追求し、使い込むほど自然に柔らかくなるガーゼの性質に注目しました。こうした日々の研究の結果、暖かいうえに通気性があり、そして吸収性も備えたものが生まれました。さまざまな改良を重ねた結果、お客さまに評価いただいているような肌ざわりに至ったのだと感じています。

ただ、肌ざわりがいいといっても、科学的な根拠を伝えたところで買いたいという気持ちは生まれません。実際に触っていただき、気持ちよさを感じていただくのが大事なんです。

 

――「パシーマ®」が認知されていないときから、体験してもらうところを大事にしながら地道に広げた感じですか。

そうですね。百貨店さんとか催事に呼ばれたりした際は、極力行っていました。あとは寝具店さんでの勉強会を開くなども、地道にしていましたね。

最近ではインターネット販売も行っており、FacebookやInstagramなどでも発信するようになりました。Facebookは長年続けてきたこともあり、フォロワーさんも増えているので大事な発信場所です。

ですが、広告はあまり利用しないようにしています。私見になってしまうのですが、広告でお金をかけてもさっと流して見ない人が多い印象でして。その代わり、きちんと取材をして記事で取り上げていただく機会があれば、できるだけ応じるようにしています。記事であれば、しっかり内容を読み込んでくださる方が多くて、私たちの思いをしっかり伝えることができるので。なかには愛用者の方が、自身のブログなどで「こういった記事を書きたいです」と連絡いただくこともあるんですよ。そういったところで取り上げていただけるのはとてもうれしいですね。

おかげさまで「パシーマ」はここ数年、注文数に対して生産が追いつかず欠品してしまうような状況が続いていました。まだまだ伸びしろはあると思っています。人手不足が原因なところもあったので、これからは働き手も増やしていきたいですね。

 

会社は「大人の学校」であり、人を育てる場。人が育ついい職場をつくる

 

――これからは社内の人も増やしていくということですので、ぜひ読者に貴社の雰囲気をお伝えしましょう!職場の雰囲気や特徴などをお聞かせください。

全体的な雰囲気を一言でいうなら、真面目一本というところでしょうか。当たり前のことですが、製造業は真面目に取り組まないといい製品は作れないので、そういった人が多い職場です。若い人もいて、近い年代同士で話している姿をよく見かけます。

また最近ですと、職場環境に関しても社員から意見をいただいたこともあって、休憩室の整備やトイレを新しくするなど設備面も整えました。

 

――社長は長年、この会社と一緒に歩まれてきたかと思うのですが、今と昔とで感じる違いはありますか。

私の若い頃は、休憩時間だろうと関係なく厳しいことを言われることも多くて、休憩と仕事の境目がなくなってしまうようなことがよくありました。当時の時代背景もあったと思いますが、今いる社員たちにはそういった思いはしてほしくないと思っています。

今は社員同士でプライベートな話なども楽しそうにしているので、温かい目で見ています。昔に比べて、コミュニケーションをとりやすい環境にはなったのではないかと。

基本的に私がとやかく口をはさむことはないのですが、仕事上、危険な作業をすることもあるので危険を感じたときだけは厳しく注意しますね。言わないで済むなら言いたくないのですが、安全に繋がることを思えばこそです。

 

――今後の展望についてお聞かせください。どういう会社・組織にしていきたいですか。

人が育つ環境があるいい会社にしたいですね。そもそも私は「会社は人を育てる場」だと考えています。たとえていうならば「大人の学校」です。

会社を存続させるには、利益の追求だけではいけないと考えています。大事なのは人です。特に社会人経験がなく、何も知らないところから一人前になるには基本的なマナーやルール、知識を一から教えていくのは会社の役目。人材が育っていくことが会社を続けていくうえでは必要不可欠です。

 

――最後に製造業のやりがいなど読者へのメッセージをお願いします。

製造業の良さはたくさんあります。まず確かな技術を身につけられるということ。

「芸は身を助く」といいますが、何らかの技術や技能を身につけておくことはきっと役に立ちますし、こうした技術の習得こそ製造業の面白みです。習得した技術がそっくりそのまま使えなくても、技術を身につけるために頭や身体を使って「技術を身につける方法」はその身に宿ります。そのような土台が身につけば、それがベースになっていろんな技術を習得できるようになり、きっと手に職をつけられるようになる。こうした力が身につくのは製造業の魅力ではないでしょうか。

 

龍宮株式会社について

・ホームページ:https://pasima.com/

 

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